キム・ジョーンズ氏はモノグラム・エクリプスの他にもモノグラム・シャドウという新しいモノグラムキャンバスを発表しています。コラボレーションへの貢献を鑑みると、伝統の再解釈を通して革新的なデザインを生み出す素晴らしいデザイナーですね。今回ご紹介しているLouis Vuitton(ルイヴィトン)のアルファ・ウェアラブルウォレット(モノグラム・エクリプス)は2つのコンパートメントと正面のフラットポケットから構成されるアイテムです。正面側のコンパートメントは中にマチがあり、一見狭そうに見えても大きく口が開くため出し入れがしやすい作りになっています。幅18.5cm、高さ11cm、マチ6.5cmのコンパクトなサイズ感にショルダーストラップが付属。レザーは全てブラックの牛革で、金具もマッドなブラックで統一されています。丸みのある深いブラックがモノグラム・エクリプスを縁取り、洗練された黒の世界観が魅力的です。荷物は最低限に必需品だけを持ち歩くミニマムなスタイルを貫きたい方へピッタリなアイテムですね。(アルファ・メッセンジャーは幅24cm、高さ16cm、マチ8cm)
2025/05/13
ルイヴィトン修理リペア
LOUISVUITTON根革修理
こんにちは。高級ブランドバッグ・財布等の修理専門店REPAIR-SHOP HIRAISHIYA(リペアショップひらいしや)です。今回REPAIR-SHOP HIRAISHIYAがご紹介するのはLouis Vuitton(ルイヴィトン)のアルファ・ウェアラブルウォレットNV(モノグラム・エクリプス キャンバス)の根革修理です。向かって右側にある根革(Dカンが付いている箇所)の根本に亀裂が入ってしまっています。アルファ・ウェアラブルウォレットNVは従来のアルファ・メッセンジャーと比べると角の丸みが取れ、よりコンパクトな印象があるニューバージョン(NV)として登場しました。キャンバスはモノグラム・エクリプスが採用されていますね。モノグラム・エクリプスキャンバスは2016年のルイヴィトン秋冬コレクションで登場したラインです。当時のメンズ アーティスティック・ディレクターだったキム・ジョーンズ氏によって考案され、その後多くの形で展開されています。ルイヴィトンの歴史と辿ると旅行鞄屋から始まることは知っている方も多いと思います。ルイヴィトンではアーカイブとして過去の貴重なトランクを保存しており、キム・ジョーンズ氏はその中にあったブラックキャンバスから着想を得たそうです。ブラックを基調としたキャンバスにグレーのモノグラムが並ぶ様子は落ち着いた夜を思わせますが、「エクリプス」とは「日食」を意味しており、日食時の表現しがたい神聖な空気も纏っているように伺えます。イギリスロンドンに生まれたキム・ジョーンズ氏はセントラル・セント・マーチンズ芸術デザイン大学(イギリスの公立芸術大学)を卒業した後自身のファッションブランドを立ち上げ、ファッションフィルムの製作や幅広いブランドとのコラボレーションを経て2008年にdunhill(ダンヒル)のクリエイティブディレクターに任命されました(ダンヒル入社後に自身のブランドを閉鎖)。ルイヴィトンのメンズ・プレタポルテ部門の新スタイル・ディレクターに就任したのは2011年のことで、就任から退任する2018年までにSupreme(シュプリーム)とのコラボレーションに大きく貢献しました。ここまでの経歴を見ても、在籍するブランドと他ブランドとのコラボレーションも彼の特徴の一つと言えるでしょう。ルイヴィトン退任後はDIOR(ディオール)とFENDI(フェンディ)のアートディレクターを兼任する等、ファッション業界に大きく貢献していることは言うまでもありません。
修理リペアの実例概要
さて、今回REPAIR-SHOP HIRAISHIYAでご依頼を受けたのはLouis Vuitton(ルイヴィトン)のアルファ・ウェアラブルウォレット(モノグラム・エクリプス)の根革修理です。根革とはストラップやハンドルとアイテム本体を繋ぐ役割をしているパーツのことで、このアルファ・ウェアラブルウォレットには左右と正面に3つほど根革があります。修理を依頼された箇所は正面の根革で、おそらくキーホルダーやストラップ等を付けるためのものでしょう。Dカンと呼ばれる金具が取り付けられています。その根元に小さな裂け目があるのが見えるでしょうか。根革は本体と外付けのパーツの間にあり、それを支える役割を持っています。そのため負荷がかかりやすく、力の加わり方によっては劣化して裂けてしまうこともあるのです。ご依頼品のウェアラブルウォレットもおそらくフロントのDカンに何かを付けて使用されていたのでしょう。しかし、負荷が積み重なって劣化したというには他の部分には劣化等の使用感が見られないことから、付けていたストラップがどこかに引っ掛かってしまった、あるいはそもそもストラップをつけておらずDカンそのものが引っ掛かってしまった可能性があると思われます。
根革の修理は、通常であれば根革を丸ごと交換することが多いです。しかしアルファ・ウェアラブルウォレットは根革がフロントポケットを縁取る帯革と一体になっています。更にその帯革には直接Louis Vuittonの刻印が施されており、同じくLouis Vuittonの刻印が入ったカシメ(丸いボタンのような金具)も付いています。革に彫られている刻印の再現は不可能であり、カシメも一度取り外してしまうと再利用ができません。アイテムにとって重要なパーツですので、そう簡単に交換するわけにはいきません。そのため今回の修理では根革部分のみを切り取って似たような革で根革を新たに取り付ける方法でお直しをいたしました。元は一枚の革でしたので、上から貼り付け・縫い付けをしても目立たないようにしなければなりません。オリジナルと全く同じものをご用意することはできませんが、できる限り似たような色、似たような質感になるよう合わせて革を選んでいます。色が黒ということもあり周囲に馴染んで修理跡もあまり目立たない仕上がりになりました。また使えるようになればいい、ではなく、できる限り美しく仕上げる。REPAIR-SHOP HIRAISHIYAではそんな思いを持って修理に取り組んでおります。
さて、今回はLouis Vuitton(ルイヴィトン)のアルファ・ウェアラブルウォレットNV(モノグラム・エクリプス キャンバス)の根革修理をご紹介させていただきました。冒頭ではモノグラム・エクリプスの考案者であるキム・ジョーンズ氏の紹介をさせていただきました。彼は2025年に入ってからディオール・オム(ディオールの紳士服部門)のアーティスティックディレクターを退任することが発表されており、今後の活躍にも注目していきたいですね。ルイヴィトンのバッグやお財布は日常に溶け込むカジュアルさと洗練されたエレガントが融合するデザインを生み出し続けています。ブランドに受け継がれるものを守りつつ、時代に合わせ常に新しさも取り入れていくハイブランド、ルイヴィトン。これからもファッション業界の最先端を走り抜けていくことでしょう。さて、高級ブランドバッグ・財布等の修理専門店REPAIR-SHOP HIRAISHIYA(リペアショップひらいしや)では、ブランド正規店では断られてしまった修理内容もお受けできる場合がございます。事前相談サービス「無料カウンセリング」もご用意しておりますので、諦める前にぜひ一度ご相談くださいませ。お客様のご利用をスタッフ一同お待ちしております。