2025/09/25

その他修理リペア

Dunhill白カビクリーニング

こんにちは。高級ブランドバッグ・財布等の修理専門店のREPAIR-SHOP HIRAISHIYA(リペアショップひらいしや)です。今回REPAIR-SHOP HIRAISHIYAがご紹介するのはダンヒル(Dunhill)のショルダーバッグの白カビクリーニングです。
英国紳士の洗練されたスタイルを象徴するブランド、ダンヒル(Dunhill)。その歴史は、現代の私たちが思い描くラグジュアリーブランドのイメージとは少し異なる場所から始まりました。遡ること19世紀末、創業者アルフレッド・ダンヒルの父がロンドンで創業したのは、馬具専門の工房「ダンヒル・ファクトリー」でした。馬車が主要な移動手段だった当時、彼らの手掛ける馬具は、上流階級の紳士たちから高い評価を受けていました。
しかし、アルフレッドは時代の変化を敏感に感じ取っていました。20世紀に入ると、世界は急速に「馬からモーターへ」と移行し始めます。自動車が普及するにつれ、馬具の需要は次第に減少していくことを予測したアルフレッドは、家業を大胆に転換することを決意します。彼が掲げたスローガンは、「モーター以外のすべて(Everything but the motor)」。この革新的な発想のもと、ダンヒルは自動車の普及に伴うあらゆるニーズに応える製品を生み出していきます。
例えば、運転中に着用するレザーコートやゴーグル、そして自動車の座席に固定できる旅行用トランクなど、機能性とデザイン性を両立させたアイテムは、裕福な自動車愛好家たちの間で大流行しました。また、自動車にちなんだ珍しいライターや、シガーケースなども手掛け、彼らのライフスタイルそのものを豊かにするブランドへと成長していきました。
その後、ダンヒルはより広い意味での「旅」や「移動」に焦点を移していきます。飛行機や電車での旅が一般的になるにつれ、あらゆる旅のシーンで活躍するバッグやレザーグッズ、スーツや筆記具など、身の回りのものをトータルで提案するブランドへと発展していったのです。このように、ダンヒルは常に時代の最先端を行く人々のニーズに応え続けてきました。今回お預かりしたショルダーバッグも、自動車の普及によって旅のスタイルが変化した時代に生まれた、ダンヒルの旅の哲学を体現するアイテムと言えるでしょう。

修理リペアの実例概要

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今回お預かりしたのは、ダンヒルのショルダーバッグです。一見するとシンプルなデザインですが、実際に手に取ってみると、その洗練された構造と高い実用性に驚かされます。メインの収納部分には、ファスナー付きのポケットが1つと、書類などを整理するのに便利なフラットポケットが2つ備わっています。さらに、バッグの背面にもファスナーポケットが設けられており、スマートフォンやパスケースなど、すぐに取り出したいものを収納するのに非常に重宝します。 このバッグが持つシンプルさは、まさにダンヒルが追求してきた「機能的な美」を体現していると言えるでしょう。装飾を最小限に抑えながらも、使う人のことを第一に考えたポケットの配置や、荷物の出し入れをスムーズにする工夫が随所に凝らされています。無駄のない構造は、日々持ち歩くアイテムとして最高の使いやすさを提供してくれます。お客様が長年ご愛用されていたことが、手触りの良さからも伝わってきます。革特有のしなやかさや、身体に沿うような柔らかさは、まさに時間をかけて育まれた証拠と言えるでしょう。

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今回ご依頼いただいたダンヒルのショルダーバッグは、全体に白カビが発生している状態でした。特に、湿気がこもりやすい蓋の裏側や収納部の裏地など、ほとんど全ての部分にまで広がっており、依頼品が適さない環境で長期保管されていたことが伺えます。 REPAIR-SHOP HIRAISHIYAでは、過去に革製品に発生した白カビ除去のご相談を数多くお受けしてきました。白カビは空気中に存在するカビの胞子が、高温多湿な環境やホコリなどの栄養分が付着した状態で革の表面に付着し繁殖します。革の繊維には、カビの栄養源となる成分が含まれているため、特に適切な湿度管理がされていない場所で保管すると、このように一気に繁殖してしまうことがあります。白カビのほとんどは革の表面に発生するため、クリーニングを行えば除去は可能です。しかし、長く放置するとどうしても白カビの跡が残ってしまう可能性があるため注意が必要です。カビは放置するほど、根が深く、除去が困難になります。そのため、早期のメンテナンスを行うことが非常に重要です。

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今回、バッグ全体に広がっていた白カビを除去するため、私たちは三段階にわたる丁寧なクリーニングを実施しました。まず、柔らかい馬毛ブラシを使って、革の表面に付着したカビの胞子やホコリを優しく払い落とす作業から始めます。これは、革を傷つけずに、できる限りカビの菌糸を取り除くための重要な工程です。 次に、皮革専用の洗剤を使い、革を濡らしすぎないように注意しながら、カビが発生している全体を丁寧に拭き上げていきます。デリケートな革製品のクリーニングは、革に負担をかけず、かつカビの原因菌をしっかりと除去する必要があります。そのため、洗剤を柔らかい布に少量含ませて拭き取ることで、革の奥深くに水が染み込むのを防ぎながら、表面の汚れとカビをきれいに取り除きました。 最後に、再発を防ぐための仕上げを行います。プラチナと抗菌剤を配合した皮革専用の防カビミストを全体に吹き付けることで、目に見えないカビの菌を死滅させ、新たなカビの発生を抑制します。この予防処置によって、お客様が今後も安心してバッグをご愛用いただけるようになります。

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今回、白カビに覆われていたダンヒルのショルダーバッグは、専門的なクリーニングによって見違えるほどすっきりとした姿を取り戻しました。もう使うのは無理かもしれないと諦めていた方もいらっしゃるかもしれませんが、このようにカビは早期のメンテナンスで元の美しい姿を取り戻せる場合がほとんどです。 長年ご愛用されていたバッグが、再び日常で活躍してくれることは、私たちにとっても大きな喜びです。保管する際は、湿気を避け、クローゼットにしまいっぱなしにせず、時々風通しの良い場所に出してあげるだけで、白カビの発生を予防できます。簡単なメンテナンスを心がけるだけで、大切なバッグを長く良い状態で保つことができます。ぜひ、これからもこのバッグとの新たな歴史を刻んでいってください。 以上で、今回のDunhill(ダンヒル)ショルダーバッグのクリーニングのご紹介を終わらせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました。REPAIR-SHOP HIRAISHIYAでは、高級ブランドの正規店では断られてしまった修理内容もお受けできる場合がございますので、ぜひ一度ご相談くださいませ。お客様のご利用をスタッフ一同お待ちしております。