革製品のお手入れ~ブラッシング~
2024.03.25
皆様が「ブラッシング」と聞いて浮かぶのはどのようなことでしょうか?
それはきっと対象によって様々で、人であれば髪や歯、動物であれば毛、衣類であればウールなどが思い浮かぶ方もいらっしゃると思います。
REPAIR-SHOP HIRAISHIYAでは革製品をお取り扱いすることが非常に多いため、筆者はまず革製品のブラッシングが思い浮かびます。普段から革製品のお手入れをされている方であればこのブラッシングも身近なものだと思いますので、直ぐ思い浮かんだ方もいらっしゃったのではないでしょうか。
今回はそんな「革のブラッシング」についてご紹介させていただきます。
目次
1.革製品のお手入れ
革製品のお手入れには日常的に行うものや半年に一度行えばいいものもあります。
革の状態によって必要なお手入れも変わってきますので、使用した日、しばらく使っていなくて久々に出した日にはじっくりと確認してみることも必要です。
ここでは革製品の基本的なお手入れについてご説明していきます。
1-1 ブラッシング
まずはブラッシングです。
ブラッシングは日常的に行った方が良いとされるお手入れの一つです。
革の表面に付いた塵やホコリ、汚れなどを取り除く効果があります。
イメージとして多いのはビジネスシューズでしょうか。特に紳士靴は大切に履かれる方も多いでしょう。帰宅をしたら靴を軽くブラッシングする方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
日常的にご愛用の頻度で言えばお財布やバッグもそうですよね。毎日使うものだからこそしっかりとお手入れもしてあげてください。
とはいえ、毎日毎日お財布とバッグにまでブラッシングをしていては大変ですので、日常使いをしているものであれば一週間に一度くらいでもいいでしょう。
1-2 乾拭き
その名の通り乾いた布で拭くお手入れです。ブラッシング用のブラシが無い時や、ブラシを当てるには少し汚れがひどい時などには乾いた布で汚れを拭き取ってあげましょう。
乾拭き用のタオルはできるだけ毛羽立ちが少ないものが好ましいです。状態によっては革の表面のコーティングが溶けてベタベタになっていることもあり、そうなるとゴミとして糸くず等が革についてしまう可能性があります。
1-3 オイル
革製品は油分が重要です。そのためオイルクリームなどを使用して定期的に油分を加える必要があります。
油分が少なくなった革はパサパサになり硬くなっていきます。硬質になっていくと、当たり前ですが柔軟性がなくなります。つまり、バッグなど元々柔軟性が必要な製品であればあるほどヒビ割れてボロボロになってしまう可能性が非常に高くなってしまうのです。
そのため定期的に油分を補充してあげることはとても重要なのです。
※油分を与えすぎても良くないので、半年に一度などオイルでのお手入れの時期を決めておくことをお勧めします。それだと忘れてしまうという人は、なんとなくパサついてきたから油分をあげようかな、という認識でも良いでしょう。全くお手入れをしない場合と比べたら雲泥の差です。
オイルでのお手入れで注意しなければならないのは、オイルやオイルクリームの種類です。
このお手入れ用のオイルやクリームは現在様々な種類があります。そしてそれぞれ革の種類に特化したものが次々と生み出されています。
特にヌメ革の場合、オイルクリームでのお手入れはほとんどの場合色が濃くなります。革を鞣すときに使用されたタンニンという成分が反応するからです。オイルクリームによってはヌメ革用のものもあり、色が濃くなりにくいものも発売されています。
オイルクリームはほとんど全ての革製品に使用できるものもありますので、革製品を好んで使用される方はひとつ持っておくのが理想的ですね。
※中には匂いが苦手という方もいらっしゃるので、自分自身が使って不快じゃないものを選ぶことも大切です!
2.ブラッシング
ここまでお手入れについてご説明してきました。では実際にはどのような道具で、どのようにブラッシングをすればいいのでしょうか?
それではブラッシングについて詳しく見ていきましょう。
2-1 どんなブラシを使うの?
革製品のブラッシングに多く使われているのは「馬毛」のブラシです。
馬毛のブラシは毛が柔らかいのが特徴で、革を傷つけずにお手入れすることができます。スムースレザー(表面に凹凸がない滑らかな革の総称)は豚毛のブラシを使用することも可能ですが、柔らかいものやデリケートな製品では馬毛のブラシを使用します。REPAIR-SHOP HIRAISHIYAではどんな革でも傷つけないよう主に馬毛のブラシを使用しています。
スウェードの場合でもブラッシングには馬毛のブラシを使いますが、スウェード特有の色味を合わせる(起毛)作業にはまた別のブラシを使用します。こちらは金属製のブラシで、寝てしまっている革の繊維を起こして毛の向きを整えることができます。
2-2 どんな風にかければいいの?
馬毛のブラシを使用するときは、大抵の場合は変に気を使わなくても大丈夫です。毛自体が柔らかいのでよほどデリケートなものでもない限り傷がつくことはないでしょう。
靴もそうですが、バッグやお財布などは形も様々でマチが狭いことも多々あります。そんな時はブラシのサイズを変えて気になるところにかけていきましょう。中には歯ブラシ型の馬毛ブラシなんてものもありますので、製品にあったものを選んでいきましょう。
スウェード・起毛革のブラシは金属製ですので、毛先は触ると痛いです。スウェード・起毛革以外に使用すると傷だらけになってしまうでしょう。だからと言ってスウェード・起毛革になら遠慮なく使っても大丈夫というわけではありません。力加減を間違えると起毛部分が剥げてしまう可能性がありますので、優しく慎重にブラッシングをしていきます。
2-3 ブラッシングをしないとどうなるの?
ブラッシングをしないと、当たり前ですがホコリが溜まります。ホコリが溜まるということは汚れに繋がり、汚れも放置してしまうとシミになり、さらにシミを放置すると革の劣化に繋がります。ホコリを好む害虫の温床になってしまうことも……。
REPAIR-SHOP HIRAISHIYAでもご依頼の多いルイヴィトンのクリーニングでも、写真のように隙間にホコリが溜まってしまっているものをよく見かけます。
ルイヴィトンのアイコンでもあるモノグラムやダミエのラインはそのほとんどがトアル地という合成皮革によって構成されています。トアル地は耐久性に優れた優秀な素材ですので、隙間をブラッシングするために多少開いたりしてもそう簡単には破れたりしません。
また、ルイヴィトンのクリーニングで多いのはトアル地と革の境界線の汚れです。モノグラムやダミエは色が暗いものが多いため普段使用している分には目立ちませんが、専用洗剤を染み込ませた布でクリーニングをしてみると意外にも汚れが付いていることがあります。これも普段ブラッシングをすることで汚れとして定着する前にホコリやゴミとして落とすことができますので、ぜひ実践してみていただきたいです。
2-4 効果は汚れ落としだけじゃない?
実は革製品のブラッシングには汚れ落とし・ホコリ取り以外の重要な役割があります。
それは革の「エイジング」です。
エイジングとはヌメ革の特徴である”色の変化”のことを指します。ヌメ革は鞣し(革の柔軟性や耐久性を長持ちさせる為の処理・工程のこと)の段階でタンニンと呼ばれる鞣し剤を使用します。このタンニンは革に染みこんだ後、紫外線や刺激を与えられることで色が濃くなっていく特徴があり、この色の変化をエイジングと呼んでいます。
ブラッシングは、そんなエイジングで起こる色の変化を均一にしてくれる役割があります。
汚れたりぶつけたりしたのにそのまま放置してしまうと、あとからそこだけが色濃く変化してしまうことがあります。しかし、ブラッシングをしていればその色ムラを軽減してくれるのです。
ヌメ革はルイヴィトンのバッグにもよく使用されている素材です。とくにルイヴィトンの代表的なラインであるモノグラムにはその節々にアクセントとしても使われていますよね。ネヴァーフルであればハンドルや口革、アマゾンであれば角のカバーや縁周り(パイピング部分)などに付いています。
ルイヴィトンの公式サイトの素材説明をみても経年変化によりアメ色に変化していく、というように記載があります。美しいエイジングを楽しむためにもしっかりとブラッシングを行いましょう!
もちろん色ムラが出た方が好みだという方もいらっしゃいますので、ご自分がどのように革を育てていきたいのかによってお手入れの方法を変えてみるのも楽しみの一つですね。
3.まとめ
今回は革製品のブラッシングについてご紹介させていただきました。
革製品は日々のお手入れをしっかりすることで長く使い続けられる非常に魅力的なものです。使用とお手入れを繰り返すうちに柔軟性が出てきて自分だけの形になっていくのを楽しむこともできます。
お手入れの中でもブラッシングは特に簡単なものですので、ぜひやってみてくださいね。きっとご愛用されている革製品への愛着も増すはずです。
REPAIR-SHOP HIRAISHIYAのホームページではお手入れ以外にも染めや修理、ルイヴィトン製品やその他革製品にまつわる記事を掲載しております。よろしければ併せてご覧くださいませ。
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