2025/12/15

プラダ修理リペア

PRADA補色修理

こんにちは。高級ブランドバッグ・財布等の修理専門店のREPAIR-SHOP HIRAISHIYA(リペアショップひらいしや)です。今回ご紹介するのは、PRADA(プラダ)のソフトカーフレザーバッグの補色修理です。
PRADAは1913年にミラノで創業されて以来、単なるトレンドではなく、伝統的な美意識と革新的な素材研究を融合させることで、知的で洗練されたスタイルを確立してきました。特にブランドの礎となった革製品へのこだわりは、メゾンが誇る最大の財産です。
PRADAは、ナイロンの「ポコノ」のような革新的な素材で有名ですが、その真髄はやはり上質な天然皮革の取り扱いにあります。今回ご依頼いただいたバッグに使用されているカーフレザー(仔牛革)は、その中でも特に高級とされる素材です。
カーフレザーの魅力とPRADAの哲学: カーフレザーは、生後6ヶ月以内の仔牛の皮を使用しているため、非常にきめ細かく、柔らかい手触りを持っています。銀面(表面)は滑らかで、大人の牛革よりも繊細で上品な光沢を放ちます。PRADAが好んで使用するこの素材は、過度な装飾を排したブランドのミニマルなデザインに、優雅で洗練された質感という深みを与えます。PRADAのバッグは、シンプルながらも素材の良さが際立つため、素材そのものが持つ表情が全体の印象を決定づけます。
カーフレザーはその供給量が限られている希少な素材であり、PRADAは厳格な基準のもとで高品質なものを厳選しています。この徹底した品質管理こそが、PRADA製品が世界中のエグゼクティブに選ばれ続けている理由の一つです。
また、PRADAは色選びにおいても非常に優れており、このソフトカーフレザーを用いることで、ニュアンスのある複雑な色彩を表現することを可能にしています。今回お預かりしたバッグの淡く上品なグレー系のような繊細で奥行きのあるカラーは、滑らかで質の高いカーフスキンだからこそ実現できる発色です。このような素材を惜しみなく使用し、イタリアの高度な技術で加工するという、素材への飽くなき探求心こそがPRADAの真骨頂です。PRADAの製品は、持つ人の個性を引き立てながらも、流行に流されない普遍的な価値を提供し続けています。
今回は、この上質なソフトカーフレザーの表面に、日常使用によって発生した色剥げを修復することで、バッグが持つ本来の知的な美しさを蘇らせます。

修理リペアの実例概要

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今回お預かりしたのは、PRADAらしいミニマルで洗練されたデザインが特徴のハンドバッグです。素材には、PRADAが厳選したソフトカーフレザー(仔牛革)が使用されています。カーフならではのきめ細かく、しっとりとした柔らかな質感が、バッグのシンプルなフォルムを際立たせています。 カラーは、淡く上品なニュートラルグレー系で、知的で落ち着いた印象を与えます。この繊細な色合いは、ソフトカーフの滑らかな銀面と相まって、持つ人のスタイルを優雅に引き立てます。 バッグのデザインは、ハンドルと本体を繋ぐメタルパーツや、さりげなく配置されたPRADAのロゴプレート、そしてそっと添えられたレザーのリボンディテールが控えめな可愛らしさを演出しています。過度な装飾を排した中にメゾンのこだわりが光る一品ですね。 普段使いしやすいサイズ感と、ショルダーストラップも付けられる実用性も兼ね備えているため、日常の様々なシーンでご愛用されていたことが伺えます。今回は、この上質なレザーと繊細な色合いを美しく保つため、主に角の擦れによる色剥げを修復する補色(カラーリペア)のご依頼をいただきました。

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今回お預かりしたPRADAのソフトカーフレザーバッグには、長年のご愛用によって避けがたい二つの主要なダメージが見られました。 まず、一つ目は、レザーバッグに最も多く見られる症状である「角の擦れによる色剥げ」です。 バッグの底角は、持ち運びや置く動作のたびに床や壁、身体などに接触するため、使用中にどうしても摩擦が集中する箇所です。この日常的な負荷の積み重ねにより、革の表面の染料層が削り取られ、下地の色が露出し、白っぽく目立つ状態になっていました。日常的にご使用されている場合、この部分の擦れを完全に避けることは至難の業と言えます。 二つ目は、バッグ全体のレザーの乾燥です。一見したところは大きな問題がないように見えますが、実際にバッグに触れると、レザーが必要とする油分(栄養分)がかなり抜けてしまっていることがわかりました。ソフトカーフレザーは、そのきめ細かさゆえに、適切なケアをしないと油分が抜けやすく、乾燥が進行すると、硬化やひび割れ、表面の色のくすみの原因となります。この乾燥が、軽微な摩擦であっても色剥げを引き起こしやすくなる要因ともなっていました。

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今回の修理は、角の色剥げを修復する補色作業に加え、乾燥が見られた革全体に油分と潤いを回復させる複合的なアプローチを取りました。 まず、最初の工程は「油分補給(1回目)」です。革が乾燥している状態でクリーニングを行うと、その後の乾燥工程で残っているわずかな油分も水分と一緒に抜けてしまい、革の状態が悪化する可能性があります。これを防ぐため、クリーニングの前にあらかじめ必要な栄養分を補給し、乾燥から革を保護する準備をしました。 次に、クリーニングでバッグ表面の汚れや手垢、古い油分を丁寧に除去しました。その後、油分補給(2回目)を再度行います。これによりクリーニングで失われた油分を補い、革の柔軟性を最大限に回復させ、補色作業に適した下地を整えました。 下地が整ってから、いよいよ補色作業です。オリジナルの「淡く上品なグレー系」の色味を忠実に再現するため、繊細に調色した染料を、擦れが目立つ角を中心に、色剥げ部分に薄く均一に定着させていきました。ソフトカーフの柔らかい質感を損なわないよう丁寧に作業を進めることで色剥げは解消され、乾燥が解消されたレザーに美しい色が馴染み、バッグ本来の知的な輝きを取り戻しました。

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入念な油分補給と補色作業によって、角の色剥げは完全に修復され、バッグは本来の淡く上品なグレー系の色合いを取り戻しました。乾燥が進んでいたソフトカーフレザー全体にしっとりとした柔らかな質感が回復したことは、大きな成果です。 触れた際の質感も改善され、今後、以前よりもさらに気持ちよくバッグをご愛用いただけることを願っております。 愛着ある品を使い続けたいというお客様は多いですが、劣化が進みすぎると修理不可となるケースもございます。だからこそ、傷みが軽微なうちに早めに適切な修理をご相談いただくことが、長くご愛用いただくための鍵となります。私たちは、お客様の大切なアイテムが持つ普遍的な価値を未来へ繋げるため、技術と知識をもってサポートさせていただきます。 以上で、今回のPRADA(プラダ)ソフトカーフレザーバッグの補色修理のご紹介を終わらせていただきます。最後までお読みいただきありがとうございました。高級ブランドバッグ・財布等の修理専門店であるREPAIR-SHOP HIRAISHIYAでは、高級ブランドの正規店では断られてしまった修理内容もお受けできる場合がございますので、ぜひ一度ご相談くださいませ。お客様のご利用をスタッフ一同お待ちしております。