2022/11/16

コーチ修理リペア

部分染め・クリーニング

こちらはrepair hiraishiyaに先日ご依頼いただいたCOACHの三つ折り財布です。ブランドイニシャルである「C」をモノグラムとしてあしらった1番人気でCOACHの代名詞ともいわれるシグネチャーシリーズの財布です。ものとしては本体は布地になっておりフチ部分は革であしらわれたとても長年大切にお使いになられたヴィンテージ品で全体的にすり傷や色あせている印象がありました。写真を見ていただくとモノグラム部分にも擦れてシグネチャー部分の生地が部分的に薄くなってしまっているのが分かります。こちらの部分を違う素材でお直ししてしまうと、せっかくのCOACHのデザインをなくしてしまうため、カウンセリングをさせていただいた上で今回お客様の修理内容としては革の部分の色剥げのみを染め直しをしてほしいとのことでした。修理依頼であった革の部分ですが革部分である紫の色が経年劣化により色あせ、質感も本来のツヤがなくなり乾燥をしているような状態でした。革は頻繁にお手入れをして経年劣化を楽しむ方もいらっしゃいますが、なかなかお手入れにかける時間や知識をかけようとすると大変ですよね。当修理店の女性スタッフも私物の数年前から愛用している革の財布のお手入れ方法を教えて欲しい。という相談もよく受けます。革の知識がない方もデザイン性の高さから皮革製品を手にとることは多いかと思います。皮と革を簡単に説明すると「皮」は人の手が加えられていないもの、「革」は人の手で製品の素材に加工が施されているものになります。修理方法ですが、今回は染め加工がされた「革」になります。さらに革は3層に分かれており表面は銀面(または銀層)と言って製品化される前にコーティング加工がされています。このまま色を塗っても革本体には浸透しないため、まずクレンジングで表面のコーティングを剥がしてから作業をしていきます。革を染める際には特殊な水溶性の染料を用います。この染料が扱いやすいという理由から固い性質のアクリル絵の具を使ってしまいますと、乾いたあとに表面が固くひびが入ってしまうので、ご自身で行う場合には注意が必要です。染めに関しても専門的な知識をもった皮革技術士が在籍のrepair hiraishiyaの得意とするところですので安心してお任せいただければと思います。

修理リペアの実例概要

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では、早速状態を見ていきましょう。COACHのシグネチャーが上品なデザインが際立つように金具があしらわれた三つ折りの財布です。とても思い入れのあるお品物とお見受けいたしました。これからも長く使い続けたいという素敵な思いを叶えることが私達修理専門店の使命であり誇りです。今回のお品物の革部分は紫に染め加工がされておりますが使い続けていくうちに当初の色合いが変わってきてしまいます。こちらも経年劣化による素敵な風合いではありますが、今回染め直しをすることで当初の風合いに近づけることが可能です。まずは全体の表面についた汚れを落とすクリーニングをしていきます。革の修理専門店のREPAIR-SHOP HIRAISHIYAでは創業75年のクリーニング店で培った知識と経験も強みでございます。素材に合わせてクレンジング、ウェットクリーニング、ドライクリーニングの3種類のいずれかを基本とし、状態によっては職人が組み合わせて綺麗にしていきます。今回行ったクレンジングでは専用の洗浄液を使って拭き取っていきます。全て手作業で確認しながら行うので細かいところも綺麗にすることができました。手垢等はもちろん除菌効果が高いものを使用しています。

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使用する際に自然とついてしまう手垢も綺麗にクレンジングをすることができました。続いて修理内容に入っていきます。今回のような擦れて剥げた部分は色を入れてあげる必要がありますのでクレンジング後、コーティングが剥がれたことを確認し本来の色を見ていきます。色あせてしまった部分に合わせてしまうとお客様が考える仕上がりのイメージに合わなくなってしまいます。ですので、お品物全体を見て変色していない部分に合わせて色を配合していきます。紫とひとつにいっても赤みよりの紫なのか、青みが強いのか、仕上がりを決める大事な作業になりますので慎重に時間をかけて行っていきます。それほど色味は大事なポイントですね。今回の場合は少し青みを強く調合し、原色のみだと若干チープな印象になってしまうのでくすみ具合を出す黒を入れ、色に高級感をもたせることにしました。色を調合できたら実際に修理箇所を染めていきます。もともとの生地のベースの色に色をのせていくと白い紙にのせたときと色の出方が変わるので染めながらも少しずつ色を調整しながら塗布していきます。

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こちらが染め工程が完了した状態です。ぱっと見大きく変化していないように見えるかもしれませんが、それほど違和感なくナチュラルにもとの紫色を再現できました。今回の修理方法で難しかった点は塗装する革部分が細く繊細なデザインでしたので布地につかないよう養生し、慎重に塗布する必要がありました。細い専用の筆を使って革部分にのみ塗料を塗っていく繊細な作業です。こういった場合に全体染めより染めムラができやすい傾向もあり、革自体も1度では色が定着しないため数回に分けて色を乗せては乾かしを繰り返します。手間を惜しまず1番ベストな色合いまで染めこんでいきます。手作業にこだわるrepair hiraishiyaならではの技術です。繰り返すこと4回の場合もあれば状態によっては10回ほど染めたこともあります。職人の目で見て染め具合を調整していきます。時間はかかりますがお客様に喜んでもらうため何度でも調整をしていきます。ここまでくれば後は仕上げ工程に入っていきます。現在の状況は色を入れただけの状態なのでこのままだと、衣服に塗料がついてしまったり色が抜けてしまいます。ここで最初の工程で剥がしたコーティングの出番です。

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修理後も少しでも長持ちするようにRepair hiraishiyaで使用しているコーティング剤は、バリア100という溶剤で撥水作用が強いものを選んでおります。コーティング加工を終え、こちらが全工程を終え仕上がったお品物です。全体のクリーニングと革のリペアが修理内容でしたが完了してみると店舗に到着したときとは全く違う綺麗な姿に生まれ変わりました。今回の修理内容は交換修理などはなく、既存の状態をリペアする内容のものでしたが綺麗な状態になりお客様にも喜んでいただけたのではないかと思います。革修理専門店のRepair hiraishiyaではルイヴィトンのお直しを得意とし県外問わず、沢山のご依頼をいただいております。ヴィトンのみならずその他のブランド品も幅広く修理しております。革製品のクリーニングはもちろん、パーツの色を変えてみたい。裏地を違う色にしたい。など正規店で断られてしまったお直しもrepair hiraishiyaでお受けできる場合もございますのでぜひ、一度お電話かお問い合わせフォームにてお問い合わせください。お客さまからご依頼いただいた際にはお客様の気持ちに寄り添い、皮革技術士の資格を持つスタッフがベストな修理方法をご提案させていただきます。

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