こちらはまだクリーニング前の状態ですが、もともとの色は裏地である程度予測はついたうえでお話しすると、かなり黒住が出ており、原型の色がほとんど分からない状態でした。こうなると、裏地の元の色をはじめ記録し、それに近いお色に染め変えるという工程で作業をすすめてまいりました。そのため、この段階ではどの部分を染めていくかチェックしている状態です。そして、元の色を確認したのちに、全体のクリーニングに入ります。状態としてはクリーニングで落ちないなのは明らかだったので、まずは表面のコーティングや簡単な塗装のはがしを行うことにしました。表面は比較的目視しながらできるので、とても難しいわけではありません。そのため、汚れているところ、汚れていないところを専用の溶剤や洗剤を使って丁寧に消毒とクリーニングをしていきました。これをすることにより、後ほど染める塗料が染まりやすくなります。逆にこれをしていないときれいに色が染まりませんので、こちらの工程も必要になってきます。もししないと、色は一時的に染まるが、時間の経過と共に色がぼろぼろと剥げてくるということが起こりえます。そのため、細かなクリーニングは必要となります。
2022/09/05
シャネル修理リペア
シャネル|財布修理
こちらはシャネルの革財布になります。全体的に汚れと色剥げが起きています。汚れか色褪せかはメンテナンスしてくるとわかってくるのですが、こういった革リペアの場合はたいていどちらの場合もあります。革の構造は革本体とその上に乗った染色液で出来ています。その染色膜の上に汚れがつけば、こういった黒ずみのシミや汚れのようになることもありますし、単純に染色膜がはがれて元の地の部分が出てきてしまっている場合もあります。まずはどういった汚れなのかを見極めえていくのが大切です。順番としては表面の汚れを取ってみる。そのあと、汚れで落ちない場合は染色していくという流れになります。しかし、たいていの革の汚れの場合は、染色が必要になってきます。理由としては、表面の染色膜についた汚れは、落そうとすると、一緒にその染色も取れてしまうことがほとんどだからです。付いたばかりの汚れ等は表面に軽く乗っているだけなので、革クリーニングだけで落とせる場合もありますが、たいていの場合は古いシミや汚れがほとんどで、染色膜を一緒に取り除かないときれいにならないパターンが多いです。もし、取れた場合は染色します。こういった革のリペアでよく勘違いされるのが汚れだけ落として染色はしなくていいという方です。こちらの冒頭での説明の通り、こちらのシャネルのお財布に限らず、汚れだけ落としてきれいになる革製品はほぼありません。たいていは、クリーニングした後に染めの工程が必要になってきます。しかし、革の特性として表面にほこりやゴミがたまるのも事実なので、まずはそちらを取り除くためにブラッシングを行います。そうすることにより、表面上の汚れをとります。これをしないと、ほこりや汚れがクリーニング時に埋まってしまい、とれない汚れに変化してしまうためです。そのため、クリーニングするにも染色するにもまずは革製品に関してはブラッシングが基本の作業となります。ブラッシングして表面の汚れを落とすということは必要不可欠です。そして、きれいになった状態から初めてクリーニングに入ります。これは汚れていないと飛ばされそうな工程ですが、とても大事なものになっています。そうした基本を行わないと革のリペアやクリーニング、メンテナンスを始める前より汚れて帰ってきたなんてことは起こりえます。そのため、こちらの製品もブラッシングから行いました。たとえ、目で見えてなくても大切な工程です。そうしてきれいに表面の汚れが取り除かれたのを確認してから次の工程に進んでいきます。
修理リペアの実例概要
革財布の中も少し見ていきましょう。こちらもクリーニング前の革財布となります。かなり手垢から汚れからついているのが写真から見て取れると思います。こういった手垢や汚れもしっかり落としてから染めに入らないと後からの染色がうまく染まりません。そのため、元の染料を落とすくらい強めの液を使って汚れを落としていきました。そのクリーニング液も、強度があり、あまり強いものを使ってしまうと元の革が弱ってしまい、革が傷んでしまいます。そのため、目立たないところで試し試ししながら革の状態と汚れ落ちをみて、進行する必要がありました。こちらの革財布はかなり強めにクリーニングして、表面の手垢のような黒ずみはきれいに取れてきましたが、元のベージュ色も一緒に多少はがれました。これは革製品のクリーニングではよくあることです。これをやりすぎると革を傷めますし、強くクリーニングしないと手垢が取れないですし、頃合いが難しかったりします。こちらの製品は幸い、そこまで革本来の風合いを変えずにお直しすることが可能でした。そしてクリーニングが終わると染色に入ります。
そしてこちらは革財布のクリーニング前全体写真です。シャネルの高級な財布ですが、手垢や汚れがついてしまうと風合いが落ちてしまいますね。これはどうしようもないことですが、このままではもったいないですね。革財布のリペア方法を知っている方はこうなった場合は染め直す方法しかないとわかると思いますが、こう全体的になってしまっては染め直すしかきれいにする方法はありません。もし、部分的に汚れていたとしても、どちらにせよ、その部分だけ染めることは難しくなります。理由としては、その部分だけキレイになってしまい、今度は周りとの差が目立ってしまうからです。そのため、たとえ部分的のシミだとしても、全体を染めて色の差が出ないようにすることが大切になってきます。そうすることによって全体の状態が均一に色が入って、新品のようになるわけです。しかし、染めるうえでの一つ注意点としてはこちらの財布もそうですが、シミがひどければひどいほど色を上から何度も塗り返さなければならず、それをすると革の上に染料が沢山乗るので、厚みが増すのと風合いが変わります。革のしぼというか革らしさがどうしても無くなってしまう可能性が高いです。これはどうしようもないことです。色を重ねなければシミは隠せませんし、そうした場合は染料を何度も塗り重ねるため、革の本来の風合いが変わります。
ようやく完成したのがこちらの状態です。色はだいぶ変わったと思いますが、新品のように変わったと思います。風合いも思ったほどに変わらずに仕上げれたと思います。色もベージュのように染め上げました。これは初めの色に近い色で染め上げた結果です。黒の汚れは完全には取れないので、その黒を隠すためにベージュの色を何度も染め直してわからないくらいになったと思います。逆にここまでしないと黒の汚れはとれません。理想の色というわけにはいきませんが、初めの色に近い色で染めました。この色ではなく、違う色が希望の場合もできますが、今回は同じ色ということだったので、この結果となりました。これで納得してくれたかはその後のお客様の声を聞けていないので、なんともいえませんが、ご満足いただけていればなによりです。このように色は何万種類とありますので、必ずしもいい結果に終わるとは限りませんが、なるべく染める前に事前に話し合ってどういった色合いにしたいかは相談するようにしております。私たちがお客様の立場にたってもそうですが、高いお金をだしていただいて、満足いただけないのはREPAIRーSHOP HIRAISHIYAとしても本望ではありません。そのため、当社もできうる限りの努力と技術向上のため、毎日励んでおります。今後も何かお困りの革の財布がありましたら、色染めからリペアからなんでもご相談くださいますようよろしくお願いいたします。