マルジェラの歴史と特徴について
2025.03.18
ファッション界に革命を起こした孤高のデザイナー、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)。1988年に自身の名を冠した「メゾン マルタン マルジェラ(現在のメゾン マルジェラ)」を設立し、既存の価値観を覆す斬新なデザインと徹底した匿名性で、今なお多くのデザイナーに影響を与え続けています。本記事では、マルジェラの歴史と特徴を徹底的に解説し、その魅力に迫ります。
目次
1.マルタン・マルジェラの生い立ち
1-1.キャリア初期(才能の萌芽、アントワープからパリへ)
1957年、ベルギーのゲンクに生まれたマルタン・マルジェラは、幼少期から服作りに強い関心を示しました。既存の衣服を解体し、再構築することで独自の服を生み出すことに喜びを見出し、その根底には「既成概念への疑問」がありました。ドレスメーカーであった祖母の影響も大きく、幼少期からファッションへの関心が高かったマルジェラは、アントワープ王立芸術アカデミーに進学。アカデミーでは、既存のファッションの枠にとらわれない、自由な発想と実験的な手法を学び、後のデザインに大きな影響を与える基礎を築きました。特に、アントワープ王立芸術アカデミーは、「アントワープの6人」と呼ばれる世界的に有名なデザイナーたちを輩出した場所であり、マルジェラもその一員として、才能を開花させました。卒業後はパリに移り、ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタントとして経験を積みます。ゴルチエの下で培われた技術と自由な発想は、マルジェラのデザインの根幹を形成しました。若き日のマルジェラは、ゴルチエの創造性に触発され、自身のクリエイティビティを磨いていったのです。ゴルチエの元で、マルジェラはファッション業界の最前線を経験し、自身のブランドを立ち上げるための準備を着実に進めていきました。
1-2.メゾン マルタン マルジェラの設立とデビュー
1988年、マルジェラはパリで自身のブランド「メゾン マルタン マルジェラ」を設立。当時のファッション界は、華やかでグラマラスなスタイルが主流でしたが、マルジェラはそれに逆行するような、粗野で退廃的な美しさを追求しました。1989年のパリコレクションでデビューを飾り、ランウェイに一般人を起用したり、顔を布で覆うなど、当時のファッションショーの常識を覆す演出は大きな衝撃を与えました。招待状を白い無地の紙にしたり、会場を廃墟のような場所にするなど、先入観を与えずに服そのものを見てもらいたいというマルジェラの強い意志の表れでした。また、ショーの演出だけでなく、服の作り方においても従来の常識を覆しました。古着やリサイクル素材を積極的に使用し、衣服の構造を分解し、再構築する「脱構築」の手法は、当時のファッション界に大きな衝撃を与えました。

2.マルジェラのデザインの特徴
2-1.マルジェラがファッション業界に与えた影響
マルジェラのデザインは、以下の特徴によってファッション界に大きな影響を与えました。
- 脱構築(デコンストラクション): 衣服の構造を分解し、再構築するデザイン。縫い目や裏地をあえて見せることで、衣服の概念を問い直しました。
- グランジ: 古着やリサイクル素材を使用し、粗野で退廃的な美しさを表現しました。
- 匿名性: メディアに姿を現さず、服そのものに注目を集める。ブランド名よりも服自体の価値を重要視しました。
- 反モード: 流行に逆らうデザイン。当時の主流であった華美な装飾を避け、シンプルで機能的なデザインを追求しました。
- アヴァンギャルド: タブーに挑戦する実験的な試み。タブーとされていた素材の使用や、ショーでの前衛的な演出など、常に新しい試みに挑戦しました。
- ユニセックス: 性別を超えた自由なスタイル。性別による衣服の区別をなくし、誰もが自由にファッションを楽しめるようなデザインを提案しました。
- リサイクル・アップサイクル: 廃棄物への新たな価値付与。古着や端切れなどを再利用し、環境に配慮した服作りを行いました。
- 実験性: 新素材や技法への挑戦。常に新しい素材や技術を取り入れ、ファッションの可能性を広げました。
- 静謐性: 素材やカッティングの美しさ。装飾を極力減らし、素材本来の美しさや、服のシルエットの美しさを際立たせました。
- ユーモア: ファッションへの遊び心。服にユーモアを取り入れることで、見る人に驚きや喜びを与えました。
- 白の追求: アトリエや舞台を白で統一。白はマルジェラにとって、純粋さ、平等さ、そして無名性を意味する色でした。
マルジェラのデザインは、衣服を通じて社会や文化へのメッセージを発信し、ファッションの可能性を広げました。
コレクションではモデルの顔を布で隠すなど、とことんアイテムにフォーカスすることにこだわりを見せています。アイテム本来の魅力を最大限伝えるための工夫を模索した結果、こういった魅せ方に至ったのでしょう。
2-2.マルジェラとアートの関係性
マルジェラは、ファッションとアートの境界線を曖昧にするような、新しい表現を生み出しました。彼のデザインは、単に服としてだけでなく、アート作品としても評価されるべきものです。マルジェラは、美術館やギャラリーで作品を発表するなど、積極的にアートの世界との交流を図りました。彼の作品は、ファッションの枠を超えて、多くのアーティストや批評家から注目を集めています。マルジェラは、ファッションをアートの領域にまで高めた、稀有なデザイナーと言えるでしょう。
2-3.マルジェラが残した「余白」の美学
マルジェラの徹底した匿名性は、ファッション界における「パーソナリティ」の重要性を問い直しました。彼は、自身のパーソナリティを隠すことで、服そのものに注目を集めることに成功しました。また、匿名性を貫くことで、ブランドイメージに頼らない、純粋なクリエイションを追求しました。マルジェラは、自身の存在を消すことで、服に「余白」を与えたのです。この「余白」は、観客に自由な解釈を促し、服との個人的な対話を可能にしました。マルジェラの匿名性は、単なる戦略ではなく、彼の美学を象徴するものでした。

3.マルジェラの代表的なデザイン
- 足袋ブーツ: 日本の足袋から着想を得た独特のブーツ。独特なフォルムと履き心地の良さで、ブランドのアイコン的存在となりました。
- デストロイニット: 古着ニットの解体・再構築。グランジファッションの象徴として、多くの人に愛されました。
- カレンダータグ: コレクションラインを示す0~23の数字。このタグは、マルジェラの匿名性を象徴するものでもあります。
- レプリカ: 世界中から集めたヴィンテージアイテムの忠実な再現。時代を超えた普遍的なデザインが魅力です。
- アーティザナル: 手作業による一点物。高度な技術と創造性が融合した、芸術作品のような服です。
- ハの字ライダース: 特徴的なジップ配置。時代を超えて愛される、マルジェラの定番アイテムです。
- 透明ヒール: 斬新なデザイン。まるで宙に浮いているかのような、斬新なデザインが特徴です。
- ウィッグコート: ウィッグを素材に使用。常識を破壊するようなデザインで、マルジェラの代名詞的なアイテムです。
- オーバーサイズシルエット: 身体を覆うような、通常のサイズよりも大幅に大きな服。着る人の個性を引き出し、ファッションの自由度を広げました。
これらのデザインは、現在でも多くのファッション愛好家から支持されています。
マルジェラには0~23までのラインがありますが、そのうち6つのラインが独立した「MM6」はカジュアルなラインが多く、若者に人気を集めています。風呂敷や折り紙などからインスパイアされて生まれた「ジャパニーズバッグ」がアイコンバッグとなっています。
4.マルジェラの功績と影響
マルジェラは、以下の功績を残しました。
- 既存の価値観を覆す斬新なデザイン
- 匿名性による服への注目
- 脱構築やグランジといった新たな流れ。
- 多くのデザイナーへの影響
- サステナビリティの概念の導入
- 美の多様性の提示
- ファッションとアートの融合
マルジェラのデザインは、アート作品としても評価されています。彼の革新的なデザインは、ファッション界に大きな変革をもたらし、多くのデザイナーに影響を与えました。
彼のデザインは、多くのデザイナーにインスピレーションを与え、新たな創造性を刺激しました。マルジェラの精神を受け継ぐデザイナーたちは、彼の遺産を尊重しながらも、独自のスタイルを追求し、ファッション界に新たな風を吹き込んでいます。彼らは、マルジェラが提起した問いをさらに発展させ、ファッションの可能性を広げ続けています。
5.メゾン マルジェラ 伝統の継承と進化
5-1.マルタン・マルジェラの引退とその後
マルタン・マルジェラは、2008年に惜しまれつつもブランドを去り、2009年に引退を表明しました。彼の引退は、ファッション界に大きな衝撃を与えましたが、その後の沈黙は、彼の伝説をさらに神秘的なものにしました。引退後、マルジェラは公の場に姿を現すことはありませんでしたが、彼のデザインは、今もなお多くの人々に愛され、インスピレーションを与え続けています。
5-2.ジョン・ガリアーノの就任
2014年、ジョン・ガリアーノがクリエイティブ・ディレクターに就任。マルジェラのDNAを受け継ぎつつ、自身のスタイルを融合させ、メゾン マルジェラを新たな高みへと導いています。ガリアーノは、マルジェラの遺産を尊重しながらも、自身の得意とするドラマティックな要素を加え、ブランドに新たな魅力を吹き込みました。「アーティザナル」ラインをさらに進化させ、オートクチュールとプレタポルテの境界線を曖昧にするような、革新的なコレクションを発表しています。
5-3.現在のメゾン マルジェラ
現在のメゾン マルジェラは、ガリアーノの指揮のもと、革新的なデザインと高い技術力で世界中のファンを魅了しています。ジェンダーレスなデザインやサステナビリティへの取り組み、デジタル技術を活用した新たなファッション体験の提案など、常にファッション界の最前線を走り続けています。メゾン マルジェラは、伝統と革新を融合させながら、これからもファッション界を牽引していくでしょう。
5-4.メゾン マルジェラの未来
ジョン・ガリアーノが率いるメゾン マルジェラは、マルタン・マルジェラの精神を受け継ぎながら、新たな時代を切り開いています。ガリアーノは、マルジェラのDNAを尊重しつつ、自身のクリエイティビティを融合させ、メゾン マルジェラをさらなる高みへと導いています。メゾン マルジェラは、これからも革新的なデザインと高い技術力によって、ファッション界を牽引していくでしょう。
まとめ
マルタン・マルジェラは、ファッション界に革命を起こした孤高のデザイナーです。彼の斬新なデザインと徹底した匿名性は、今なお多くのデザイナーに影響を与え続けています。マルジェラの功績は、ファッション史に永遠に語り継がれるでしょう。
マルジェラが提起した「衣服」の概念は、ファッションに対する私たちの視点を大きく変えました。彼のデザインは、私たちに服を着ることの意味、ファッションとは何か、そして美とは何かを問いかけます。マルタン・マルジェラは、ファッション界に永遠に残る、重要なメッセージを私たちに託したのです。
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