エナメルの変色や色移りについて

2024.01.12

皆さんはエナメル製品を使用していてこんなことを思ったことはありませんか?

・大切に保管していたのに色が変色してしまった…
・他のバッグと一緒に置いていたら色が移ってしまった…
・表面がベタベタしている…

など、エナメルを使用していると様々な症状が見られ、修理についてのお問い合わせはとても多くいただきます。
エナメルは特有の光沢感や艶感が美しく女性を中心に多く支持されていますが、実はとても扱いが難しく、デリケートな製品なのです。
今回はエナメル製品の代表格であり、REPAIR-SHOP HIRAISHIYAにも多くご相談いただく「ルイヴィトン・ヴェルニ」について紹介していきます。

そもそもエナメルとは、どのような素材でできているのでしょうか。
私たちが普段使っているバッグや靴、財布などに使われているエナメルは、皮革素材やビニール素材、布などにエナメル塗料を塗って表面をエナメル加工された製品が使われています。
エナメル塗料とは樹脂などを溶剤に溶かした透明塗料(ワニス)に顔料を混ぜて作られたものです。
高級ブランドのバッグや財布に使われているエナメルは、主に皮革素材にエナメル加工が施された「エナメル革(レザー)」と呼ばれる素材が使用されているので、エナメルもれっきとした「皮革素材」ということになるのです。

ルイヴィトン・ヴェルニは1998年にデザイナーのマークジェイコブスによって生み出され、その高級感のあるデザインや風合いは国や年代を問わず世界中の女性たちを魅了しています。
ヴェルニはフランス語で「エナメル」を意味しており、その名の通りエナメル素材が使用された製品がヴェルニラインです。
ルイヴィトン・ヴェルニのレザーには、高級な素材とされるカーフスキン(生後6か月の仔牛の皮)が使われており、エナメル加工されたレザーにはモノグラムのデザインが型押しされていることから、ヴェルニの正式名称は「モノグラム・ヴェルニ」と言われています。

特徴的なデザインや高級感のある素材で多くの女性を魅了しているルイヴィトン・ヴェルニにはさまざまな魅力がたくさんあります。
まず一つ目は、他の商品にはない唯一無二のデザインであるということです。
革の表面にエナメル加工されたレザーを使用しているため、周囲の光を反射して独自の光沢を生み出すデザインになっています。この光の当たる角度によって見え方が変わるヴェルニラインは、周りと差をつけることができるアイテムです。
また、エナメル加工されたレザーと歴史あるルイヴィトンのモノグラム柄を融合させたヴェルニのデザインは、職人技が光る商品と言えるのではないでしょうか。

ルイヴィトン・ヴェルニの魅力二つ目は、カラーバリエーションが豊かであるということです。
ヴェルニには、ブラックやホワイトなど世代を問わず万人受けする定番カラーから、ビビットカラーやパステルカラーまで、多彩な色が展開されています。
そのカラーの種類は廃盤になった商品も含めると約50種類以上ものカラーが現在までに展開されており、廃盤になった希少な色彩のヴェルニは今でも中古市場で高い人気を誇っています。
このように、自分の好みやスタイルに合わせて自由にカラーを選べるヴェルニラインは多くのルイヴィトンファンや様々な国や世代のファッション愛好家にとって欠かせない商品となっています。

エナメルの素である樹脂は水を弾く特性があるため基本的に水気には強い素材ではありますが、水濡れには十分注意が必要です。水気に長く触れたままでいると、エナメルに加水分解という反応が起こります。加水分解とは水に反応した素材が分解されてしまうことで、表面にべたつきが発生したり、コーティングが剥がれ落ちて表面がボロボロになったりします。
このような加水分解が起きてしまう理由は、日本と海外との気候の違いにあります。
日本の気候は高温多湿で湿度が高いのが特徴ですが、ルイヴィトン発祥の地であるフランスは気温的にはあまり差はありませんが湿度は日本ほど高くありません。海外の気候を基準に作られているブランド製品では、この日本の気候の違いに対応できず加水分解を起こしやすくしているのです。

また、ヴェルニに使用されているパテントレザーは他の染料を吸収しやすいという特性があるので、色物のバッグなどをヴェルニの隣に置いておくと色移りしてしまう可能性があります。そのため、保管時や運搬時には他のアイテムとあまり接触しないように注意しなければいけません。
さらにヴェルニは直射日光によっても変色してしまうので保管時は保存袋に入れて保護することがおすすめです。この時使用する保存袋は購入時に付属する箱や保存袋では通気性が十分でなく、湿気がこもりやすくなってしまうので、通気性を持つ素材である不織布などを使用して製品を保護するのがおすすめです。

こちらは使用しているうちにエナメル表面のコーティングが剥がれて変色してしまったため、黒への染め変え修理を行いました。
染め変え修理を行う際はまずそれぞれの素材に合った専用の洗剤でクリーニングをします。クリーニングで表面の汚れをきちんと落とさないと、染めるときに使う染料が綺麗に染み込まずムラになってしまうことがあるので、染める前のクリーニングはとても大事な作業です。

クリーニングが終わるといよいよ染めの作業です。ヴェルニを染めるときはエナメル専用の染料を使って染めていきます。一度全体的に染めたらムラを無くすために専用の液で拭きます。この最後の拭く作業もとても大変な作業です。仕上げの液は何種類もあり、拭く順番によって液の種類を変えて色が出なくなるまで何重にも拭いていきます。

こうして黒へ染め変えたものが下の写真です。
バッグ全体が黒色になることによって雰囲気がガラッと変わり、さらに高級感が増したように見えます。染める前のまだら模様に影響されることなく、ムラなく染め変えることができました。

こちらはしばらくの間保管していて久しぶりに使おうと取り出したところ、まだらに変色してしまっていたため黒への染め変え修理を行いました。
ヴェルニ(エナメル)は同じ色への染め直しが難しいので弊社では現状の色よりも濃い色での染め変えを行っており、基本的に黒への染め変え修理のみご依頼を承っております。
先ほど説明した染めるときに使用する染料は染み込む性質があり、バッグを染めたときに縫い糸を伝って周りのエナメルではない部分や、染めたくない部分にまで色が移ってしまうことがあるのでとても慎重に塗らないといけません。ヒューストンはエナメル部分にヌメ革の根革が縫い付けられているので、縫い糸を伝って根革まで染まらないようにするところが重要です。

黒へ染め変えたものが下の写真です。
縫い糸を伝って根革まで色が移ることなく、無事にエナメル部分のみを染め変えることができました。これは長年の経験を積んだ職人さんならではの技術ではないでしょうか。こちらのハンドルや根革はきれいな状態でしたので、黒へ染め変えたことによって新品同様に生まれ変わりました。

今回は、ルイヴィトン・ヴェルニ(エナメル)の注意点や修理事例についてご紹介させていただきました。エナメルは見た目の高級感や特徴的なデザインから世界中の幅広い世代の方々に人気のあるアイテムですが、使用方法や保管方法については特に気を付けなければいけません。大切に保管していたのに久しぶりに取り出してみると変色していたというご相談や、使っているうちにべたつきが出てきたというご相談は多くいただきます。
べたつきや変色してしまったエナメルのアイテムでも、REPAIR-SHOP HIRAISHIYAでは染め変え修理を行うことによってまた新たに生まれ変わらせることが可能です。今回ご紹介したルイヴィトンのヴェルニ以外にも様々なラインのアイテムや、ルイヴィトン以外のブランドの修理も承っておりますのでぜひ一度ご相談くださいませ。


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