2026/01/16

シャネル修理リペア

CHANEL内装交換

こんにちは。高級ブランドバッグ・財布等の修理専門店のREPAIR-SHOP HIRAISHIYA(リペアショップひらいしや)です。今回ご紹介するのは、世界中の女性を魅了し続けるラグジュアリーブランド、CHANEL(シャネル)のアイコン「マトラッセ」のチェーンバッグです。
シャネルの歴史は、1910年にガブリエル・シャネル(通称ココ・シャネル)がパリに帽子店「シャネル・モード」を開いたことから始まりました。彼女の哲学は「古い価値観にとらわれない、自由で自立した女性像」の確立にありました。当時、コルセットで身体を締め付け、豪華な装飾に埋もれていた貴族的な女性ファッションに対し、彼女はジャージー素材のドレスやパンツルックを提案し、女性の身体を解放したのです。
その革新的な精神から生まれた究極のバッグが、1955年2月に発表された「2.55」、そして現代のアイコンである「マトラッセ」へと繋がります。当時の女性用バッグは手で持つ「ハンドバッグ」が主流でしたが、ガブリエルは「両手を自由に使いたい」という自らの願いを叶えるため、バッグに革紐を通したチェーンを付け、肩に掛けるスタイルを生み出しました。これは単なるデザインの変更ではなく、女性のライフスタイルを劇的に変える「革命」でした。
マトラッセ(Matelassé)とは、フランス語で「キルティング」「ふっくらと膨らんだ」という意味を持ちます。ダイヤ形のステッチが生み出す独特のボリューム感は、馬術競技の騎手が着用するジャケットからインスピレーションを得たと言われています。このキルティング加工は、デザイン性だけでなく、型崩れを防ぎ、耐久性を高めるという実用的な目的も兼ね備えていました。
発表から半世紀以上が過ぎた今、マトラッセは単なる流行を超えた「永遠の定番」としての地位を確立しています。中古市場においてもその価値は極めて高く、特にヴィンテージ品は時代を問わないタイムレスな魅力から、世代を超えて受け継がれる「家宝」のような存在となっています。
しかし、外見がいかに美しく保たれていても、バッグの内側には歳月による避けられない変化が訪れます。内装の劣化やベタつきは、大切にしてきたからこそ直面する悩みの一つです。今回は、シャネルの魂が宿るこのアイコニックなバッグが、内装交換という大手術を経て、再び現役として活躍するまでの物語をご紹介いたします。

修理リペアの実例概要

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今回お預かりしたのは、シャネルの代名詞とも言える「マトラッセ」のチェーンバッグです。一目見ただけでそれと分かるアイコニックなデザインは、誕生から現在に至るまで、時代に左右されない究極のエレガンスを体現しています。 特筆すべきは、贅沢に使用されたブラックラムスキンです。この素材は非常にキメが細かく、真珠のようなしっとりとした光沢を放ちます。見た目の美しさはもちろんのこと、指先に触れた瞬間に吸い付くような柔らかさと、優しく包み込むような独特の手触りは、ラムスキンでなければ決して味わえない格別な魅力です。 この漆黒のレザーに対し、華やかなゴールドのチェーンとココマークが鮮やかなコントラストを描き出し、全体にジュエリーのような輝きを添えています。ダイヤ形のキルティングが生み出す陰影が、フラットなレザーにはない奥行きのある表情を作り出しており、どこから見ても隙のない完璧な佇まいです。 オーナー様が大切に愛用されてきたことで、レザーには身体に馴染むような心地よい質感が宿っています。この外観の美しさと愛着ある質感をこれからも守り続けるため、今回は「内装」に潜むトラブルを解決するメンテナンスを承りました。

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今回お預かりしたバッグの最大の問題は、内装の著しい劣化です。本来、シャネルのマトラッセの内側には、情熱的で高貴な深いワインレッドが採用されています。しかし、お写真を拝見すると、その美しい色が判別できないほど表面がボロボロと剥がれ落ち、残念ながらラグジュアリー感が損なわれてしまっています。 この症状は、かつて多くのブランドバッグの内装に採用されていた「合成皮革」特有の現象です。合成皮革は、製造から時間が経過すると空気中の水分と反応して「加水分解」という化学変化を起こします。この変化を避けることは難しく、寿命は一般的に数年、長くても10年程度と言われています。特に日本のような高温多湿な環境では劣化が進みやすく、表面がベタついたり、今回のように粉を吹いたように剥がれたりしてしまうのです。 実は、少し古めのマトラッセでは非常に多く見られる症状であり、弊社にも同様のご相談が後を絶ちません。一度劣化が始まった合成皮革は、クリーニングだけで元通りにすることは不可能です。大切なバッグを再び心地よく使うためには、劣化しない素材への「内装交換」が唯一にして最善の解決策となります。

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今回のメンテナンスでは、今後ベタつきや剥がれの心配がない「シャンタン生地」への交換作業を行いました。 まず、バッグの構造を熟知した職人が慎重に縫い目を解き、劣化した内装パーツを丁寧に取り除きます。次に、取り外したオリジナルの内装から精密な型紙を作成し、新しいシャンタン生地を正確に切り出していきます。この際、内側に隠れた「芯材」の状態も確認し、劣化が進んでいる場合は適切な補強を施すことで、バッグとしてのしっかりとした手応えを整えていきます。 内装交換の素材については、ご希望に合わせて「本革」での施工も承っております。しかし、本革は生地に比べて厚みがあるため、シャネルの緻密な内部設計を忠実に再現しようとすると、仕上がりのゆとりや操作感に影響が出るケースも少なくありません。そのため、オリジナルの構造を尊重しつつ、末永く清潔に使い続けられる今回のシャンタン生地への交換は、非常にバランスの良い選択と言えます。 細かなポケットの再現や、ブランドロゴの取り扱いなど、一針一針に細心の注意を払いながら、再びバッグとしての機能を完璧に取り戻させていきます。

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内装交換の全工程が完了し、シャネル・マトラッセは再びラグジュアリーな輝きを取り戻しました。 新しく張り替えたシャンタン生地のレッドは、オリジナルの深いワインレッドと比較するとやや明るめのトーンですが、それゆえに外装のブラックとのコントラストがより鮮明に際立っています。バッグを開けた瞬間に目に飛び込んでくる鮮やかな色彩は、使うたびに心躍るような眩しさを放っており、現代的な華やかさを纏った仕上がりとなりました。 何より、これまでは触れるのを躊躇してしまった剥がれやベタつきが一切解消されたことで、大切な荷物を安心して収納できる「実用性」が完全に蘇りました。シャンタン生地は合成皮革と異なり、加水分解による劣化の心配がほとんどありません。そのため、これからは季節や保管状況を過度に気にすることなく、永く快適にご愛用いただけます。 以上、シャネルのアイコンバッグ「マトラッセ」の内装交換修理のご紹介でした。REPAIR-SHOP HIRAISHIYAでは、見た目の美しさはもちろん、数年先も使い続けられる「機能の再生」を大切にしています。お気に入りのバッグの内側でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。