2026/02/25

ボッテガ・ヴェネタ修理リペア

Bottega Venetaクリーニング

こんにちは。高級ブランドバッグ・財布等の修理専門店のREPAIR-SHOP HIRAISHIYA(リペアショップひらいしや)です。今回クリーニングのご依頼をいただいたのは、イタリアが世界に誇る最高峰のレザーメゾン、Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ)のハンドバッグです。
ブランド名である「Bottega(ボッテガ)」はイタリア語で工房を、「Veneta(ヴェネタ)」は創設の地であるヴェネト州を指しており、合わせると「ヴェネトの工房」という意味になります。1966年、イタリア北東部のヴィチェンツァでミケーレ・タッデイとレンツォ・ゼンジアーロの二人によって設立されたこのブランドは、その名の通り、地域に根付く熟練した革職人たちの伝統技術を基盤とし、最高品質のレザー製品を生み出すことに情熱を注いできました。
ボッテガ・ヴェネタの代名詞といえば、アイコニックな編み込み技法「Intrecciato(イントレチャート)」です。これは細く切ったレザーのテープを職人が一つひとつ手作業で編み込んでいく非常に手間のかかる技法です。当時、この地方の工房にあったミシンは厚い革を縫うのには適していませんでしたが、非常に薄く柔らかい革であれば扱うことができました。そこで職人たちは、その繊細な革を編み込むことで耐久性を持たせるという独創的な手法を考案したのです。
この技法を支えているのが、選び抜かれた極上の素材です。特に「ラムスキン(生後1年未満の羊の革)」は、吸い付くような滑らかさとシルクのような光沢が特徴で、イントレチャートに比類なき気品を与えます。また、キメが細かく適度な弾力を持つ「カーフスキン(生後6ヶ月以内の仔牛の革)」は、使い込むほどに深い味わいが増す素材として愛されています。これらの希少なレザーを惜しみなく使用し、ロゴに頼らず「職人の腕」だけでブランドを表現する潔い姿勢は、本質を知る人々から絶大な支持を受けています。
しかし、こうしたデリケートな天然皮革は、皮脂汚れや乾燥、空気中の水分などの影響を受けやすいという側面も持っています。特に編み込みの隙間には埃が溜まりやすく、放置すると革の劣化を早める原因にもなりかねません。今回は、そんな職人の魂が宿る大切なバッグを、末永く愛用していただくための丁寧なクリーニングの様子をご紹介いたします。

修理リペアの実例概要

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今回クリーニングのご依頼をいただいたのは、ボッテガ・ヴェネタの美学が凝縮された、全面イントレチャート仕様のハンドバッグです。 一番の魅力は、やはり熟練の職人が一切の妥協なく編み上げたその造形美にあります。等間隔に、そして立体的に組み合わされたレザーのラインは、単なるデザインの枠を超えて、一つの工芸品のような風格を漂わせています。ロゴや装飾を一切使わずに、この編み込みの表情だけで「ボッテガ・ヴェネタ」だとひと目で分からせてしまう仕上がりに、ブランドが積み重ねてきた歴史と揺るぎない自信が感じられます。 素材には、手に吸い付くような柔らかさが心地よいラムスキンやカーフスキンが使用されています。一見するとシックなブラックですが、光の当たり方によって編み込みの凸凹が繊細な陰影を生み出し、奥行きのある上品な光沢を放っています。 シンプルで流行に左右されないデザインだからこそ、日常のあらゆるシーンでオーナー様に寄り添ってきたことが伺えます。その分、長年のご愛用によって革の隙間にわずかな汚れが蓄積したり、全体的にツヤが落ち着いてきたりといった変化も見受けられましたので丁寧にクリーニングを施してまいります。

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今回お預かりしたバッグで最も深刻な問題は、表面から網目の奥深くまで広がってしまった「白カビ」の発生です。実は、クローゼットに大切に保管していたバッグにカビが生えてしまったというご相談は、私たちが承るメンテナンスの中でも非常に多いケースの一つです。カビが発生する主な原因は、栄養・水分・温度の3つが揃うことにあります。特にボッテガ・ヴェネタが誇るラムスキンやカーフスキンといった上質な天然皮革は、タンパク質や脂質などの栄養分が豊富に含まれています。さらに複雑な編み込み構造が、湿気を溜め込む「空気の層」を形成してしまいます。ここに、ご使用時に付着したわずかな皮脂汚れや、日本の高温多湿な保管環境が加わることで、カビにとって絶好の繁殖条件が整ってしまうのです。カビは見た目が損なわれるだけでなく、革の繊維層にまで根を張り、独特のニオイを放つようになります。また、放置すると革のタンパク質を分解してしまい、変色やひび割れといった修復困難なダメージを招く恐れもあります。大切なバッグの輝きを取り戻すため、今回は表面の汚れを落とすだけでなく、革を傷めないよう配慮しながら白カビの除去を行います。

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今回のクリーニングでは、デリケートなラムスキンやカーフスキンの質感を守りながら、網目の奥に潜むカビを根絶させるための精密な作業を行いました。まずは、革専用の除菌効果の高いクリーニング剤を用い、表面だけでなく編み込みの重なり部分まで丁寧に洗浄していきます。革が幾重にも重なっているため、通常の洗浄では汚れやカビの胞子が残りやすいのが難点です。革の隙間の状態を確認しながら、手作業で細部まで液剤を浸透させ、白カビを除去しました。 洗浄後は、革のコンディションを整えるための「栄養補給」が欠かせません。カビによって奪われた脂質や、洗浄で失われがちな水分を、ボッテガ特有のしなやかさに最適な専用オイルで補填します。編み込みの一本一本に潤いが行き渡るよう、時間をかけてじっくりと馴染ませることで、硬くなりかけていた革に本来の柔軟性と、吸い付くようなしっとりとした手触りを呼び戻しました。 単にクリーニングで見た目を綺麗にするだけでなく、再び安心して長くお使いいただけるように革の状態を根本から整える。それが、お客様の大切なバッグとこれからの毎日をお預かりしている私たちのメンテナンスです。

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クリーニングを終えたボッテガ・ヴェネタのバッグは、白カビに覆われていた形跡を感じさせないほど、清々しく美しい表情を取り戻しました。 一番の懸念であった編み込みの奥のカビも一掃され、ラムスキン特有のしっとりとした質感と上品な光沢が復活しています。指先に伝わる柔らかな手触りは、まさに「ヴェネトの工房」から生まれた当時の姿を彷彿とさせます。清潔感を取り戻したこのバッグなら、大切なお出かけの際にも再び自信を持って手に取っていただけることでしょう。 一度カビが生えてしまうと諦めてしまいがちですが、適切な処置を施せば、革の物語を再び動かすことができます。今回のメンテナンスが、オーナー様にとってお気に入りのバッグを再び愛用するきっかけになれば幸いです。 REPAIR-SHOP HIRAISHIYAでは、単なる修理にとどまらず、ブランドが持つ背景や素材の個性を尊重したケアを追求しています。大切なコレクションにカビや汚れといったトラブルを見つけた際は、いつでもご相談ください。REPAIR-SHOP HIRAISHIYAでは、高級ブランドの正規店では断られてしまった修理内容もお受けできる場合がございますので、ぜひ一度ご相談くださいませ。お客様のご利用をスタッフ一同お待ちしております。