顔料の歴史と当店の染色のこだわりについて

2023.07.17

革製品専門店やオンラインショップをのぞくと、定番のブラウン系やブラックだけでなく、色鮮やかなイエローやブルーなど様々なカラーが並んでいますよね。先日、「革と人の歴史について(https://bag-repair.pro/blog/414/)」という記事にて革(鞣し)の技術の進歩について紹介させていただきましたが、革だけでなく染料も長い年月をかけて進歩しています。今回は、染料(顔料)の発展と私たちREPAIRSHOP HIRAISHIYAのこだわりについて、【ルイ・ヴィトン】の過去の修理(染色)実績等も踏まえながらご紹介していきます。

1.革を染める染料の種類と特徴

印刷する際などにも耳にすることのある「染料」と「顔料」。いったい何が違うの?全部同じ「染料」ではないの?と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。ですが、実際はそれぞれきちんとした違いがあります。

1-1.染料と顔料の違いについて

その違いというのは色の付き方にあります。「染料」は繊維の間まで色がしみこむことによって染色されます。それに対して「顔料」は生地の表面に定着して(色がとどまって)いる状態です。このようになるのは、粒子の大きさが関係しています。顔料の方が、染料と比べて粒子が大きいため、図のように表面を覆う形となります。染料は粒子が小さいため繊維の奥へ奥へと浸透していきます。

染料は生地の表面の表情(凹凸や質感)はそのまま残した状態で染まります。そのため生地本来の質感(手触り)を楽しむことが出来ます。また、繊維の奥まで生地全体がきれいに染まるので断面も処理がしやすいのも特徴です。しかし染めムラができやすかったり、耐水性が低いため雨染みなどができやすいです。顔料は、生地本来の質感が出にくいという特徴があります。表面の凹凸などを埋めてしまうためです。しかし、発色がよく多少の撥水性をもっているという特徴があります。

革本来の特徴にマッチする染料と革が持っているデメリットに対し耐性を持つ顔料。それぞれに魅力がありますね。

1-2.顔料のはじまり(世界)

顔料の歴史はとても古く、天然無機顔料という顔料が最も古い歴史を持ちます。これは天然の鉱物からできた顔料で、世界最後の壁画「ラスコー壁画」にも使用されています。最新の調査によってこの壁画は少なくとも1万5000年以上前に描かれたものであるという事が明らかになっています。描かれた牛や馬などのほとんどが黒色、あるいは褐色で描かれています。これは洞窟内で手に入れやすい黒土や赤土などの天然無機(鉱物)顔料を使ったためであるとみられています。この天然無機顔料は、何万何億年という長い年月をかけて生成されたものです。壁画が描かれていた洞窟のように、野ざらしの環境下でも変色したり見えなくなってしまうほど色あせることもない優れた顔料といえますね。

天然無機顔料の中にはなかなか手にはいらない高価なものもいくつか存在しました。特にラピスラズリという宝石から生成されるウルトラマリンいう顔料はとても貴重で金と同じ価値があると言われるほどでした。鮮やかな色の顔料をもとめ、画家たちは宮廷につかえて顔料を支給して貰っていました。このウルトラマリンと呼ばれる顔料はかの有名な絵画「真珠の耳飾りの少女(フェルメール作)」の青いターバンの部分にも使用されています。この天然無機顔料ですが、自然の中で生成されるものであるため、採取できる量に限りがあります。必要な時に必要な分だけ手に入れるというのが困難だったのです。

1-3.顔料のはじまり(日本)

日本での顔料の始まりは縄文時代といわれています。縄文時代と聞いて察しの付く方もいるかもしれませんが、土器への彩色が始まりでした。福井県の貝塚や青森県の遺跡では赤色の漆塗りの飾櫛や土器などが多く出土しており、これらの漆塗りは東日本で発達したと言われています。

1-4.合成顔料の誕生

上記で述べた通り、非常に高価で採取できる量にも限りがあるという背景から、大量に安価で手に入れることのできる顔料が求められました。

一番初めの合成顔料として生まれたのが鉛を酢にさらして生成した白色の顔料、鉛白(えんぱく)でした。これはおしろい(お化粧用の白い粉)として使われていました。しかしこれは鉛中毒による麻痺や失明などを引き起こすとして、1900年代に使用を規制・禁止されました。その後染料は大きく発展していきました。初めての合成顔料「紺青」が生まれ、19世紀初めには合成ウルトラマリンが生まれました。これにより、絵画の表現が豊かになったり建造物や宗教などにも大きな影響をもたらしました。青色が神聖な色として扱われるようになりました。

2.REPAIRSHOP HIRAISHIYAのこだわり

REPAIRSHOP HIRAISHIYAでは、革の染色やリペアを専門に行ってきた30年以上経験のプロフェッショナルな皮革復元修復師メンバーが、ご依頼内容に寄り添い最適な方法で修復を行います。ここからは過去のルイ・ヴィトンのバッグの修理実績をもとに、当社でできるリペアや染色、そしてREPAIRSHOP HIRAISHIYAのこだわりについてご説明していきます。

2-1.ルイ・ヴィトン バッグ修理

ルイ・ヴィトン 全体染めのビフォー/アフター

REPAIRSHOP HIRAISHIYAでは、バッグや財布を中心に様々な革製品の修理をお受けしております。その中でもやはり多いのがルイ・ヴィトンです。男性からも女性からも圧倒的人気をほこるルイ・ヴィトン。今回はルイ・ヴィトンのメンズライン「タイガ」から、「サシャ」(ショルダーバッグ)を一例としてご紹介していきます。

ご依頼内容はクリーニングと同じ色(グレー)での染色でした。上の画像のとおり左の角の部分は色落ちによって、真皮部分が見えてしまっていますね。このバッグのように塗装がはがれてしまう要因としては、主なものとして経年劣化や使用時の擦れが挙げられます。そしてもう1つ、最近はもうすっかり生活になじんでいる消毒用のアルコールも塗装がはがれてしまう原因なのです。これは、革製品に塗られているコーティングをはがしてしまう作用を持っています。ルイ・ヴィトンに限らず、革製品すべてに言えることですが、消毒液が乾く前にバッグや財布に触ってしまったり、除菌シートで拭きあげたりしてしまうと色落ちしてしまうので注意が必要です。

さて、作業内容について簡単にご説明していきます。まずはクレンジングで汚れ、そして表面のコーティングを落としていきます。そうすることによって、染料が革にのりやすくなります。このクレンジングが染色の「基盤」となるため、時間をかけて丁寧に丁寧に落としていきます。それが終わると次は色の調合に入ります。今回の修理内容は同色での染色でした。お問い合わせの際、きちんと同じ色で仕上がるのかというご質問をいただくこともございますが、REPAIRSHOP HIRAISHIYAでは熟練の革修復師が色合わせを行っていきますのでご安心ください。色の調合はその都度お品物を見て行うため、かかる時間もばらばらです。色の調合が終わるといよいよ染色作業です。マスキングテープでブロッキングをしてエアブラシを使って染色していきます。その後、元の状態と同様にコーティング剤を施し完成です。

※ご紹介した修理に関する詳細はこちらの記事にて公開中です。是非併せてご覧ください。https://bag-repair.pro/achievement/233/

2-2.REPAIRSHOP HIRAISHIYAの染色のこだわり

REPAIRSHOP HIRAISHIYAでは、①革製造時の染料と同じレベルの染料を使用し、革本来の風合いそのままの色の乗りと仕上りを実現する。②革専門の技術者によりシボを無くさないように薄く塗る。この二つを意識し(心がけ)て作業を行っています。

REPAIRSHOP HIRAISHIYAでは、【1.染料の種類と特徴】で述べた顔料での染色を行っております。生地の表面に定着するものの為、あまり濃く(厚く)塗りすぎてしまうと、シボ(革の風合い)がなくなってしまいます。「シボ」は漢字で「皺」と書きます。革の表面にある立体的なしわのことで、革の部位や繊維密度によって出方(模様)が異なります。下の画像はすべて異なる革製品です。よく見るとすべて模様が違いますよね。深いものから浅いものまで本当に様々です。色味も、革といえば黒や茶、暗めの赤などの濃い色で若干男性的な印象を持つものでしたが、近年では染料の進化により淡いやさしい色味や、発色の良いパキッとした赤や青の表現も可能になりました。特に顔料は鮮やかな色味が出やすく、表面もきれいに均一的な仕上がりになります。それぞれの色味・質感・状態に合わせ調色から染色まですべてこだわって、手作業で行っています。

革の部位や密度によって異なるシボ

2-3.REPAIRSHOP HIRAISHIYAだからできること

REPAIRSHOP HIRAISHIYAは業界歴80年の長い歴史、経験そして実績があります。厚生労働省の認可を受けた店舗がリペア・染色を行います。前述のとおり、高級ブランド(特にルイ・ヴィトン)の革製品を多くお取り扱いしておりますので、それぞれの状態にあった修理方法のご提案が可能でございます。

注文につきましては、店舗に直接持ち込まなくてもご自宅にいながら注文・発送のお手続きが可能です。直接顔を合わせなくてもやり取りが可能な便利な時代だからこその不安もあると思います。ご依頼前にご利用いただける無料カウンセリングや、注文フォームでの概算額のご案内など、お客様の気持ちに寄り添えるよう丁寧な対応を心掛けております。

お受けできるサービスはクリーニング、染め、修理、リメイク、アップサイクリングと多岐にわたります。先ほど、同色での染色についての修理(染色)事例をご案内させていただきましたが、全く異なるお色味での染色をご希望の場合もお気軽にご相談くださいませ。修理・リメイクというようなサービスは、地球環境保全や資源を大切にするという観点でもとても大切なことです。徐々にそういった動きが世界に浸透していく中で、当社もその取り組みの力になれればと思っております。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は染料・顔料の特徴や歴史についてのご紹介とREPAIRSHOP HIRAISHIYAのこだわりについてルイ・ヴィトンの修理実績も交えながらご説明させていただきました。

REPAIRSHOP HIRAISHIYAではルイ・ヴィトンの染色やファスナーの修理、内装やヌメ革部分の交換なども承っております。また、ルイ・ヴィトン以外の高級ブランドのクリーニングや修理も承っております。当社のホームページ内にブランドごとに修理実績をまとめたページや、部品交換(修理)に際してのルイ・ヴィトンのロゴなどに関する注意点等についてまとめたブログもございますので、ぜひご活用ください。

当社への修理のご依頼や、その他修理に関するご不明な点につきましては下記のリンクよりお気軽にお問い合わせくださいませ。修理ご依頼前に、破損や剥がれ等が生じている部分などに関して相談されたい場合は無料カウンセリングにて修理希望箇所のお写真を添付いただいたうえでご相談いただきますと、修理方法等ご提案・ご案内がスムーズです。各ブランドにて修理を断られてしまった場合でも、お受けできる場合がございますので、ぜひご活用くださいませ。

※ホームページ内に記載しております修理料金は、あくまでも目安としての物となります。修理内容や修理する範囲、備品(ファスナー等)の状況等によって前後いたします。修理等行うお品物を実際に確認し詳細のお見積りをご案内させていただきます。

【無料カウンセリング】https://bag-repair.pro/counseling/

(受付時間は午前10:00-12:00/午後13:00-17:00 土日はお休みです)

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(お電話からのご注文も可能です。☎0243-24-9477)

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